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<<   作成日時 : 2016/12/31 23:42   >>

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さて、248回記事で挙げた鈴木孝夫先生の著書

       鈴木孝夫:日本の感性が世界を変える
              言語生態学的文明論
              新潮社 (新潮選書)2014
              ISBN978-4-10-603756

だが、もちろん、碩学の積年のお仕事が背景にあってのことだから、2014年8月付の「あとがき」にあるように、3年越しの書き下ろしの著作、つまり、2012年ごろに取り掛かられたとして、そのとき、すでに85歳を超えておられて、米寿での出版ということになる。個人差があり、また、優秀な編集者のアシストを勘定にいれたとしても、大した、むしろ、素晴らしいものである。

鈴木先生の本は「閉ざされた言語・日本語の世界」「ことばと文化」「武器としてのことば」など、いくつかに目を通しており、わたくしの(ナイーヴな)言語観と(敢えて言うが)「重なる感じ」があって、わたくしにとっては一般に読みやすいという印象がある。本書は、「言語生態学」に基づいての文明論、それも、今後の有限な地球を前提にしての「持続可能な文明」モデルとして、従前の日本型文明の持つ可能性の指摘と言うことができる。

著者のスタンスを見るには、目次を掲げるのが手っ取り早い:

        序章 世界の主導文明の交代劇が今、幕を開けようとしている
        第一章 全生態系の崩壊を早める成長拡大路線はもはや不可能
        第二章 日本の感性が世界を変える ― 日本語のタタミゼ効果を知っていますか
        第三章 鎖国の江戸時代は今後人類が進むべき道を先取りしている
        第四章 今の美しい地球をどうしたら長期に安定して持続させられるか
        第五章 自虐的な自国史観からの脱却が必要
        第六章 日本語があったから日本は欧米に追いつき成功した
        第七章 日本語は世界で唯一のテレビ型言語だ
        第八章 なぜ世界には現在六千種もの異なった言語があるのだろうか
        結語
        エピローグ 人間は果たして賢い動物だろうか
        あとがき

表題からは、例えば、第七章であるが、まさしく、わたくしが、間もなく半世紀になるが、フランスで初めてテレビのニュースを見たときの印象を思い起こさせる。表音文字の文化は直線的(1次元的)で、漢字仮名交じり型の文化は平面的(2次元的)だなと強く感じたのは、当時のフランスの報道では画像があまり使われず、アナウンサーの口述が中心だったからである。

なお、第五章では、有限な地球環境の典型として、「仮想水」の問題が詳述されている。日本(人)が、(世界の)水問題に関心が薄いようなことは大変残念であり、また、危険なことでもあると痛感する。

鈴木先生の議論は、主に、四点に分かれる。

第一に、従来の主導文明は地球環境の仮想的な無限性を前提にしていたが、技術的・社会的な進展の結果として地球環境の有限性を前提にしなければならないことになってきたために、有限な環境下での成立を条件とする文明に転換していくことができない限り、滅びが避けられないことの指摘、

第二に、そのような有限環境を前提とした文明の成立の可能性の例として江戸時代を挙げ、なぜ、それが可能であったかの検討を試みていること、

第三に、このための要点として日本語、とくに、その特性の重要さというものを抽出していること、

そして、第四に、人類(ホモ・サピエンス)が異なる環境下で、数万年にわたって、なお、単一種に留まっている理由として、言語の存在を挙げ、言語が環境の変化を吸収することによって、種が維持されてきたことを指摘している。

したがって、鈴木先生の主張を、簡潔にまとめてしまえば、仮想的な無限性で代替されてきた有限性という環境に適した言語を中心に据えた文明に移行することが種の生存の条件である、ということになる。そして、そのような言語を構築していく上で、日本語は本質的に重要であるとおっしゃるのであるが、しかし、実際は、そう楽観的でもいられないということはある。

実は、本記事は、三週間余り前に書き出してはいたのだが、現勤務先の校長職を離れるための準備として、文章を用意する方を優先してしまったために、大変遅れてしまった(248回記事参照)。

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